宮城大学、AIアバターと対話しながら学ぶ保健指導教材を開発

宮城大学、AIアバターと対話しながら学ぶ保健指導教材を開発

宮城大学看護学群とNTT ExCパートナーは、AIアバターとの対話を通じて保健指導のやり方を学べる教材を共同開発した。保健師を目指す学生が、実際の対象者を相手にしているかのように、何度でも繰り返し練習できるのが特長だ。

「知っている」だけでは不十分

保健指導では、病気の予防や健康づくりについての知識を伝えるだけでなく、相手の生活背景や考え方を理解しながら、本人が自分から健康的な行動を選べるよう手助けする力が求められる。そのため保健師を目指す学生には、知識に加えて、対話を通じて相手の状況を引き出し、その場に応じて説明の仕方を変えていく実践力が欠かせない。

こうした力は、ロールプレイや模擬患者との練習を繰り返すことで身についていく。しかし、授業時間や指導する教員の数、練習相手の確保には限りがある。学生ごとに必要な練習量も異なり、「もう一度試したい」「違う聞き方をしてみたい」と思っても、授業内だけでは十分な機会を得にくいという課題があった。実習先の確保や実習期間にも制約があり、学生が実践経験を積みにくい状況も続いていた。

そこで今回、宮城大学が持つ保健医療の知識と、NTT ExCパートナーのAIアバター技術を組み合わせ、学生が自分のペースで保健指導を練習できる教材が生まれた。AIアバターに正解を尋ねるのではなく、AIアバター自体を「練習相手」として使う点が最大の工夫だ。

教材の仕組み

この教材は、特定保健指導のうち「積極的支援」の場面を想定した対話型のシミュレーションだ。AIアバターには、年齢や生活習慣、健康状態、仕事や家庭の事情、健康への考え方、行動を変える準備がどれくらい整っているかなど、一人の対象者としての設定が組み込まれている。

学生は画面上のAIアバターに向かって、実際の保健指導のように話しかける。あらかじめ決まった受け答えが返ってくるわけではなく、学生の問いかけ方によって対話の展開が変わっていく。学生は、相手の生活背景や思いを聞き出し、健康上の課題を共有しながら、無理なく続けられる行動目標を一緒に考えていくプロセスを体験する。

3つの特徴

練習相手としてのAIアバター
AIに知識や正解を尋ねるのではなく、AI側に対象者としての人物像や事情を設定し、学生が保健指導を行う相手として使う。学生は相手の反応を予想しながら質問や説明を工夫する必要があり、実際の対人支援に近い形で学べる。

何度でも、違うやり方を試せる
同じ事例に繰り返し取り組み、質問の順番を変えたり、説明の仕方を変えたり、相手の言葉をさらに掘り下げたりと、さまざまなアプローチを試せる。失敗してもやり直せる環境が、試行錯誤を通じた学びを後押しする。

対面での練習を補い、実践の機会を広げる
この教材は、教員や模擬患者を相手にした対面での演習に取って代わるものではない。実習前の予習や復習としてAIアバターとの対話を取り入れることで、対面での演習をより深い学びの場にし、限られた教育資源の中でも一人ひとりの練習機会を広げることを目指す。

学習の流れ

学生はまず保健指導に必要な知識や基本的な対話の技術を確認したうえで、AIアバターを相手に情報収集や相手の理解、情報提供、行動目標の検討などを行う。その後、自分の質問や説明、相手の反応を振り返り、うまくいった点と次に変えるべき点を整理する。必要に応じて同じ事例に再挑戦し、別のアプローチを試すという流れを想定している。

今後の検証と展開

宮城大学は今後、この教材を使った教育プログラムを実際に実施し、学生の学習成果や教材の有用性を検証していく方針だ。評価では、保健指導に関する知識の定着度や学生の自信、学習意欲、教材の使いやすさなどを確認する予定という。得られた結果をもとに教材やプログラムを改善し、AIアバターを使った教育方法の効果と課題を明らかにしていく。

さらに、対象者の設定や学習場面を増やし、さまざまな健康課題に対応できる教材への発展も検討している。看護学生の基礎教育だけでなく、保健師など保健医療専門職の卒業後の研修への応用も視野に入れているという。同大学は、AI技術の利便性を追求するだけでなく、対人援助の仕事において「人と向き合う力」をどう育てるかという観点から、対面教育とAI技術を組み合わせた教育モデルづくりを目指すとしている。

なお、第2弾として、患者との意図的なコミュニケーションをテーマにした教材の開発も進められており、2026年11月のリリースが予定されている。

出典:https://www.myu.ac.jp/application/files/2617/8875/5440/AI.pdf