横浜銀行、AI電話応答で証明書発行を自動化―地銀初の試み、繁忙期の負担を大幅軽減

横浜銀行、AI電話応答で証明書発行を自動化―地銀初の試み、繁忙期の負担を大幅軽減

横浜銀行は、ローン関連の証明書発行申請を受け付ける電話窓口に、AI技術を活用した自動応答システムを導入しました。地方銀行としては初めての取り組みで、年末の繁忙期に集中する月1,600件もの問い合わせに対応し、応対時間を半分に削減することを目指します。

このシステムは、モビルス株式会社が開発した「AIエージェント型ボイスボット」で、まるで人が応対しているかのような自然な会話を実現します。従来の自動応答では難しかった曖昧な問い合わせにも柔軟に対応し、顧客の話し方や状況に合わせて会話を進めながら、必要な情報を正確に聞き取ります。

深刻化していた「つながらない電話」問題

横浜銀行では、住宅ローンの年末残高証明書をはじめとする各種証明書の発行・再発行を行っています。特に年末調整や確定申告の時期になると、証明書の再発行依頼が集中し、1日最大150件の電話が殺到していました。

オペレーターの人数が足りず、電話がつながらない「あふれ呼」が頻発。顧客の不満が高まるだけでなく、オペレーターの負担も増大していました。この課題を解決するため、横浜銀行は新たな電話自動応答サービスの導入を決定しました。

人のように寄り添う対話を実現

新しく導入された「AIエージェント型ボイスボット」は、生成AI技術を活用することで、これまでの自動応答システムとは一線を画す自然な対話を可能にしています。

たとえば、顧客が証明書の名称や店舗名をうろ覚えで答えても、システムは登録情報や既存データを参照して高精度で候補を提示します。また、周囲の雑音がある環境でも対応でき、回答が不完全な場合は自然に聞き返しながら必要な情報を集めていきます。

横浜銀行の担当者は「AIエージェントが住所の間違いをピンポイントで修正してくれた時は感動した」とコメント。従来は折り返し電話が必要だったケースでも、その場で手続きを完了できるようになりました。

3ヶ月の実証実験を経て本格導入へ

システム導入に先立ち、モビルスと横浜銀行は2025年6月から3ヶ月間の実証実験を実施しました。その結果、申請受付から完了までの全工程を自動化できることが確認され、正式導入が決定しました。

現在、このシステムは住宅ローン年末残高証明書、返済予定表、融資取引明細表、借入金利息証明書、残高証明書の5種類の証明書発行申請に対応しています。

申請の流れ

実際の申請手続きは次のように進みます。

  1. 顧客が横浜銀行の問い合わせ窓口に電話し、ガイダンスに従って証明書発行を選択
  2. AIボイスボットが自動で応対を開始
  3. 取引店舗名や希望する証明書などの情報を回答
  4. 曖昧な回答や言い間違いがあっても、AIが登録情報から候補を提示
  5. 回答が不完全な場合は自然な問い返しで正確な情報を取得し、申請を完了
  6. 本部担当者が内容を確認し、証明書を発行

追加確認が必要な場合のみ、オペレーターが折り返し電話を行います。

今後の展望

横浜銀行は、このシステムの活用により応対時間を5割削減し、顧客満足度の向上とコスト削減を実現していく方針です。将来的には24時間365日対応の実現や、他の業務への展開も視野に入れています。

また、オペレーターを指導するスーパーバイザー向けに、AIへの指示方法に関するトレーニングの実施も検討中です。問い合わせ窓口での生成AI活用を積極的に進め、業務全体の質と効率を高めていく考えです。

横浜銀行の事務サービス部担当者は「返電が不要な受電を極限まで増やしていきたい」と今後の抱負を語っており、地方銀行における顧客サービスの新たなモデルケースとして注目が集まっています。

出典:https://mobilus.co.jp/press-release/49265