荒川区と大田区が全国初の自治体間「遠隔区民サービス」実証を開始――アバターロボットとローカル5Gで行政サービスの未来を切り拓く

全国初、自治体の枠を超えた遠隔行政サービスが始動
東京都の荒川区と大田区で、自治体をまたいだ「遠隔区民サービス」の実証実験が11月17日より開始される。アバターロボット「newme」とローカル5G通信を活用したこの取り組みは、全国で初めて2つの区役所間で展開される先進的な試みだ。
avatarin株式会社、アルティウスリンク株式会社、株式会社キャンパスクリエイトの3社が連携し、遠隔地から複数の自治体窓口業務を担う新しい行政サービスモデルの構築を目指す。
実証実験の概要――1つの拠点から2つの区役所をサポート
実証期間は2025年11月17日から12月19日までの約1か月間。荒川区役所本庁舎と大田区役所本庁舎それぞれにアバターロボット「newme」が配置され、東京都中央区にあるavatarin株式会社のオフィスから遠隔操作される。
2名のオペレーターが合計4台のnewmeを切り替えながら、窓口案内やフロアマネージャー業務を実施。来庁者の手続きサポートや問い合わせ対応など、従来職員が担ってきた業務を遠隔から提供する。
各区の業務内容に応じた適切な案内を実現するため、アルティウスリンクが提供する生成AI活用のナレッジシステムを導入。既存のマニュアル資料から短期間で高精度なQ&Aデータベースを構築し、オペレーターをサポートする。
ローカル5Gが支える安定した遠隔サービス
この実証実験の技術的な要となるのが、各区役所に構築されたローカル5G通信網だ。大容量・低遅延・同時多接続という特性により、遠隔地からでも円滑なコミュニケーションと安定したロボット操作を実現する。
ローカル5G基地局の敷設と運用管理はNECネッツエスアイが担当し、東京大学大学院工学系研究科中尾研究室がavatarin株式会社との共同研究に基づき技術面で協力している。
自治体DX推進の新たな一歩
荒川区は「荒川区デジタル化基本方針」に基づき、デジタル技術を活用した区民サービス向上と行政運営の効率化を推進中だ。大田区も「大田区DX推進計画」のもと、2040年を見据えたデジタル変革に取り組んでおり、窓口DXを重点施策の一つに掲げている。
今回の実証は、こうした両区のDX戦略を後押しする取り組みとして位置づけられる。区内業務のデジタル化と窓口サービスの満足度向上、そして行政業務における新たなBPOモデルの構築が期待されている。
産学官連携で描く持続可能な行政運営
本実証は、東京都が実施する「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」の支援を受けて実施される。この事業は次世代通信技術を活用したスタートアップ支援を目的としており、開発プロモーターであるキャンパスクリエイトが実証支援を担当する。
avatarin株式会社とアルティウスリンクは、本年に自治体支援事業における業務提携に向けた基本合意を締結済み。BPOのノウハウを活かし、遠隔から住民サービスと業務効率化を両立させる「遠隔BPO」モデルの確立を視野に入れている。
複数自治体にまたがる今回の実証は、その実現に向けた重要なステップとなる。産学官が連携し、場所にとらわれない質の高い行政サービス提供の可能性を探る。
未来の行政サービスへ――区民の暮らしを支える新モデル
この実証実験を通じて、各社は持続可能な行政運営の新たなモデル構築を目指している。人口減少や職員不足といった課題に直面する自治体にとって、遠隔技術を活用した効率的なサービス提供は今後ますます重要性を増していくだろう。
アバターロボットとローカル5Gの組み合わせによる「遠隔区民サービス」が、区民の暮らしを支え、暮らしの質を向上させる新たな行政サービスとして実を結ぶことが期待される。
