AIによる創造性の再編。才能なき者を輝かせ、天才を蝕む。
近年、人工知能(AI)が私たちの生活のあらゆる面に浸透し始めています。特に創造的な分野での活用が期待されていますが、その影響については未だ議論が分かれるところです。そんな中、ロンドン大学とエクセター大学の研究者たちが、AIが創造性に与える影響について興味深い研究結果を発表しました。
この研究では、数百人の参加者に短編小説を書いてもらい、その過程でAIの助けを借りるグループと借りないグループに分けて比較しました。
その結果、創造性スコアが低いと判断された参加者たちは、AIの助けを借りることで文章の質、楽しさ、斬新さのすべての面で大幅な向上が見られました。特に、AIが生成した5つのアイデアから選択できる場合、その効果は顕著でした。
しかし、ここで注目すべき点があります。創造性スコアが高い参加者たちにとって、AIの介入はほとんど、あるいはまったく効果がありませんでした。むしろ、わずかではありますが評価が下がる傾向さえ見られたのです。つまり、クリエイティブな才能を持つ人々にとっては、AIの助けなしで書いた作品が最も高く評価されたのです。
さらに研究者たちは、AIの介入が増えるほど、作品全体の独自性が失われ、互いに類似したものになる傾向があることを発見しました。この結果は、出版業界がAIを活用した創作を多く採用するようになった場合、業界において作品全体の多様性が失われる可能性があることを示唆しています。
これらの発見は、AIと創造性の関係について重要な問いを投げかけています。確かに、AIは創造性に乏しい人々の能力を引き出す可能性があります。しかし同時に、真に独創的なアイデアや表現が失われる危険性も孕んでいるのです。
創造性に対して、どこまでAIの助けを借りて良いのか、疑問が残ります。
今後、AIがますます創造的な分野に浸透していくことは間違いありません。しかし、私たちはAIを単なる便利なツールとして扱うのではなく、人間の創造性とAIの力をいかにバランスよく融合させるかを真剣に考える必要があるでしょう。この研究結果は、AIと人間の創造性の共存について、私たちに深い洞察を与えてくれています。
出典:https://techcrunch.com/2024/07/12/experiment-finds-ai-boosts-creativity-individually-but-lowers-it-collectively/